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逃げると言う選択肢は決して間違えては居ない筈だった。
いや、むしろ一択しかない選択肢に間違える事など、そもそも有り得ないのだ。
とにもかくにも結果から言えば逃げられなかった。
何故なら予期せぬ事態が発生したからだ。異常者……と言うか何の生き物かすら解らないが実は一体だけでは無かったのである。
俺の逃げようとする方向に空き地に居た奴に、そっくりな奴らが次々と空から舞い降りて来て。気付けば既に7体まで増え目の前に立ち塞がっている。
(居るなら最初から出て来てくれよ!)
とツッコミを入れそうになったり、冷静に数も数えられたのは恐らく死を覚悟したからであろう。
人間、本当に無理だと思ったら意外と冷静になれる物なんだと。自分の死と引き換えに気付く事が出来た。
「……はぁ」
死を覚悟し、自分の大した事の無い人生を軽く振り返ると本当に大した事無さ過ぎて、思わず溜め息が出てしまった。
「ガフルルルルゥ!!!」
俺が自分の下らない人生を振り返ってる間に7体の異常者達は鋭く尖った爪を向け、更には口から少し飛び出しているキバを剥き出しにしながら一歩、また一歩と近付いて来ていた。
(食べる気かな……それとも引き裂く気かな)
どのみち死ぬが食べられるのは何となく辛そうな死に方なので『引き裂く方でお願いします!』と心の中で祈り、そして目を閉じ覚悟した。
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