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瑠璃は表に出ると、いつも自分が住んでいる町と様子が違う事に驚いた。こんな小綺麗な場所、第6ドームにあっただろうか。
「ここは……」
一度も訪れた事のない景色に瑠璃は動揺した。
自分のような者が、第6ドームを抜けれるなんて信じられない。
月は今、夜時間になっていた。時間を設定し、ドーム全体の灯りで環境を作っている。そうでなければいつまでも暗いままだからだ。昼時間はドーム全体が明るくなる。
しかしそれも階級の高いドームに与えられたものだった。太陽光はエネルギーとなり、裕福なドームへの主なエネルギー源となっているため、第6ドームにはほんの少しのエネルギーしか供給されなかった。だから第6ドームの昼間はここよりもずっと暗い。
守のところにもう少しいるべきだったかと瑠璃は少し後悔した。
しかし、ここが第5であろうが第4であろうがもう瑠璃は第6に戻るつもりはなかった。
さっきの守とのやりとりが、瑠璃の心を更に孤独にしていた。
いままで身近に自分の帰りたい場所へ行ける人物などいなかったので、いざそれを目の前にすると強い嫉妬心で心が焼けそうになる。羨ましくて羨ましくて仕方がない。
自分がこんなに卑しい人間だとは思わなかった。知らないうちに瑠璃は指を何度も何度も噛んでいた。今はただひたすら羨ましい、彼に当っても仕方ないことは頭でわかっていたが、今は嫉妬心でいっぱいだった。
街は暗く静まり返っていた。どこもかしこも品がいい建物が並び、その高級感にあふれた建築物を見ただけで、瑠璃は興奮してくる。
こんなところに住んでみたい。
守が泊まっていたところもきっと高い所だったんだろうな。
瑠璃は自分がここに住んで生活していることを想像して、しばらく暗い街中を羨望の眼差しで見つめながらうろうろしていた。
ふとドームの記号が書かれたプレートがかかっている所にさしかかる。
第4か第5位だとプレートまで品がいいな……と思いながらプレート番号を覗き込んで瑠璃は驚いた。
~第1ドーム~ファリア地区~
「だ、第1?」
瑠璃はろくな教育は受けてなくとも、数字の部分くらいはわかる。心底焦った。
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