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その焦りは昼間増々高まった。明るくなった第1地区は、住んでいる人たちの服から治安のよさまでまるで違っていた。瑠璃はその昼間の明るさに目を細める。しかもこんなに明るい光の下に自分を晒した事がなく、その事でうろたえ動揺した。
自分のぼろぼろの服が、嫌でも目立って瑠璃はいたたまれなくなった。そのうち住人の何人かが瑠璃の姿に不審を抱き、どこかに通報したらしい。警察らしき人物が数人瑠璃の行く手を塞ごうと走り出したので瑠璃は咄嗟に駆け出した。彼は逃げるので精一杯だった。
「どこに逃げた?」
「こっちか?」
家と家との狭い隙間に入って息を潜める。ふいに窓が開いて、住人と顔が合った。悲鳴と共に瑠璃はそこから駆け出して行った。
目の前に何人もの警官が駆けつけ瑠璃の細い腕をつかんだ。
警察たちに問い詰められていくうちに、彼の身分は嫌でもばれてしまった。
瑠璃はドームを抜けた罪で監獄に入れられ、その後強制送還させられる。
ウソをついても、ここでは指紋などで番号化された住民データがあり、手元にIDカードがなくてもそこからIDを割り出される。名前もしている仕事も何もかもが暴かれた。
体を縄で縛り付けられ、そのまま瑠璃は監獄の中に押し込まれた。
「第6ドームの住人の分際でよくぬけぬけとここに来られたな?」
「ちがうんだ、俺は」
「黙れ」
警官は鞭で瑠璃の体を叩いた。
「うっ!」
「汚らわしい身分でずうずうしく入り込みおって!」
バシッバシッと何度も体を打たれる音が響く。
「うぐっ、ち、ちがうんです俺はただ……」
「まだ言うか!」
俺の言うことなんて、誰も聞いてくれないんだ。
瑠璃は階級制度の厳しさを目の当たりにした。自分達が差別されているということはわかっていたが、ここまでとは思わなかった。まるで人間扱いされていない。家畜のようだ。
瑠璃は明日送還されることになった。散々打たれた体を横にして縛られたまま冷たい床に転がされていた。
暗い空間、水のしたたる音。
もうさんざんだ。
どうして俺はこんな風に生まれてしまったんだろう。
いまさら自分のことをなげいても仕方ない。
でもくやしい、くやしいよ。
痛みでヒリヒリする体を冷たい床で冷やしながらも、瑠璃はなんとか眠りにつこうとした。
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