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ズシャ、ズシャ、ズシャ……。
うとうとした眠りは誰かの足音で破られた。暗闇の中から大きな影が近づいてくる。
その塊が、僅かな光りに照らされると、それは体の大きな見慣れない毛むくじゃらの大男だった。男は髭をさすりながら、瑠璃のほうを見てニヤニヤしている。
男は瑠璃の牢屋の前に立ち止まると「お前、売りなんだってな?」と低く含みのある笑いをした。男は何も言わずに鍵をあけて檻の中に入り、瑠璃に近づいてきた。
瑠璃は体を男の手の甲で撫でられた。昼間打たれた傷がヒリヒリする。
「うっ……」
瑠璃が呻くと、男はニヤリと不気味に微笑む。瑠璃の足のもものあたりを手でゆっくりと触ってきた。
「さわるなっ!」
いくら売りをしてたって瑠璃にも選ぶ権利がある。けれど、おびえた表情を見せたら終わりだ。相手を喜ばせる行為なんて今は見せたくない。瑠璃は焦りを悟られないように精一杯強がって見せた。
そんな彼の表情などお構いなしに男は両足を掴んだ。
「心配するな金はある」
そう言うと懐からくしゃくしゃにまるめた札を震える手でちらつかせた。
「そんなのいらねぇよ!」
瑠璃は叫ぶと、男につばを吐きかけた。
その瑠璃の行動に逆上したのか、チッと舌打ちをすると、男は掴んでいた両足の内股を強引に開こうとした。
男に上から体重を掛けられ、瑠璃はただ体を揺さぶり必死に抵抗した。しかし、上着を無理矢理引きはがされた。
「やめろ、よせ、やめてくれ!」
「いいじゃねえか、楽しもうぜボウヤ」
「やだ、お金はいらない。帰れ! いやだあぁああ!」
守は瑠璃を探しながら、後悔していた。
あの時どうして瑠璃を一人で行かせてしまったんだろう。
あれからすぐに表に飛び出し守は彼を探した。
しかし、暗いドーム内はひんやりとして誰も人影もみあたらなく、瑠璃の行方はわからなかった。
ドームからドームへの行き来は、胸に地球からきた人間の証明書をつけているだけで、ほとんど顔パスに近い状態だった。
今思えば第3ドームから第4ドームへ行こうとしてうっかり反対のドームへ向かっていたらしい。そこへ行くのに迷ったのは、第6ドームだけ離れた場所にあったからだ。
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