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しかし、瑠璃を見つける前の第4ドームだと思っていた第6ドームの入り口で、いつもより監視の人数が多いのが不思議だった。
「兄さんも物好きですね、こんな最下層のドームに……まぁ、いいでしょう」
そんな風に呆れるように言われたのが、今になって思い出される。
そこのドームだけやたらに離れていたというのもあるが、他のドームとは違ってあきらかに環境のよくない場所だとすぐに分かった。その後で、瑠璃とあの男のやりとりに合い、彼を救ったのだ。
守は瑠璃を初めて見た時、なんて綺麗な少年なんだろうと息を呑んだ。
まるでアンティークショップの片隅で売られている人形のような、陶器でできたような白く美しい顔に……エメラルドの宝石みたいな瞳に……見惚れてしまった。
しかし決して彼が幸せでない事はその体の貧相さやあちこち穴の開いたような服でわかった。
しかしその少年を自分のところに連れてきてよかったのだろうか。
このまま放って置くと、何故あのエメラルド色の瞳が、どこか遠くへ消えてしまうんじゃないか……と、そんな気がしてならない。
守はただ闇雲に探しても拉致があかないと思い、とりあえず警察に連絡をしてみた。だが、瑠璃という少年はいないと言われるばかりだ。 そのうちに周りが明るくなっていき、朝時間がきた。第一ドーム内をもう一度探してみたが、やはり依然として瑠璃の姿は見つからなかった。
ひょっとして昨日出会った場所に帰ったのかもしれないとすぐに第6ドームへ向かったが、橋の上や袂にも彼の姿は無く、彼の住んでいる場所さえもわかる事はなかった。
守は知らなかった。彼は通行証は誰にでも与えられているものだと思った。
だから瑠璃が通行証で他のドームへ、または自分のドームへ帰ったのだとばかり思っていた。
自分の家に戻ってしまったのだろうな。もうあの悲しみに満ちた瞳には会えないのだろうか。
昨日初めて会った瑠璃との場所。橋の真ん中で守は途方にくれた。
もうすぐ、夜時間だ。時計を見てそう思った。明日は帰らなくてはいけない。
もう駄目なのだろうか。
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