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ドドドドドンッ ドンッ ドンッ
その日は雷鳴が響く荒れた天気だった。
五歳になったばかりのミシアはエストリオに連れられて、自宅から離れた灰色の石でできた三階建ての建物の地下室に入った。
鉄の扉を閉め、必死の形相でエストリオはミシアを見た。
『いいかミシア、どんな大きい音がしてもここから出ては駄目だ。私がいいと言うまでここに隠れていなさい。いいね?』
ミシアは誕生日にエストリオからもらった人形を抱きかかえながら、コクッと小さく頷いた。
幼いながらも、その切羽詰る父親の顔にただならぬ恐怖を感じていた。
これから起こる出来事が自分の人生を変えてしまうのではないかという、そんな緊張に身体を強張らせて鉄でできた置物の中にしゃがむようにして入った。
ドドッ ドンッ ドンッ ドンッ
その音は先程よりも大きくなる。
エストリオはミシアの頭に軽くキスをすると置物の前部分を閉めた。
人型をした置物の中は空洞に作られていて、大人一人が隠れられる大きさだ。
これに鍵はなかったが中に取手がついているため、入っている者も扉を開けることができる。
外には吊り革のようなわっかが装飾されていて、そこを引っ張って扉を開ける構造だった。
小さい穴がいくつか開いているので息苦しくもない。
『心配するな・・・・・・必ずお前を守ってやるからな』
エストリオはそう置物に話しかけて、右後ろを振り向くと同時に脇腹に差していた銃を入口のドアに向けて構えた。
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