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その後、レガント家と関わりのあったリゲルという男の力でミシアはスエブ国へ亡命し、何も分からないまま見知らぬ土地で死体の処理を手伝わされた。
武器の扱い方、爆弾の製法、車の運転までも教えられ、十三歳になるまであらゆる訓練を行った。
あの時ミシアが予感していた通り、人生を変える程の出来事が現実として起こってしまったことに彼女自身も怒りを感じていた。
その怒りは次第に蠍の男に向けられていき、それは徐々に憎しみへと変わっていった。
あの男があの時父を殺さなければ。
あいつが全ての元凶だ。
あいつを殺せば父も喜ぶ。
絶対にあいつを捜し出して殺してやる。
その思いだけを支えに十数年間を過ごし、十五歳になったミシアは自国に戻った。
エストリオの死でレガント家は完全に力を失い、蓄えた財力は国に奪われていた。
長年守り続けたトルム地区も政府のものと変わり、今は高層ビルが立ち並ぶ都市の一部となっている。
リゲルの計らいでミシアはあの時死んだことになっていた。
同じ年齢の少女を身代わりにして、エストリオの死体に添ってうつ伏せに倒れているところを発見されている。
今ここにいる自分はその時の少女でなければならない。
『よく聞け、ミシアは死んだ。お前は今日からマリー・アガーだ』
亡命する時にリゲルによって告げられたその言葉と渡されたパスポート。
それが死んだ少女の名前であり、それはその日から自分の名前となった。
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