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リゲルという男の素性はよく知らなかった。
置物から出て、エストリオの隣で泣いていたところを彼に発見され、仲間に連れられてどこかの建物内にしばらく潜んでいた。
リゲル自身がエストリオには世話になっているということを頻りに口にしていただけで、幼かったミシアにそれを確かめる術はなかった。
囚人のように閉じ込められたスエブ国の暗がりの地下室で、ただ与えられる仕事をこなしていくことでしか生き延びる方法がなかった。
周りもリゲルの仲間だったが彼らの扱いは酷く、労働を拒む者は従順になるまで拷問を受け、そこから逃げようとする者は確実に射殺される。
リゲルの機嫌が良ければ何事もなく一日を過ごせ、機嫌が悪ければ殴られる。
そんな幼少期を他国で過ごしたミシア。
自身の成長と共に母国のギスタリも次々と豪族退治を行い、彼らの財を国に返還しては目覚ましい経済成長を遂げていった。
だが、ギスタリ国のラギ地区だけは独自の思想を掲げ続け、武装集団が集る場所へと進化していった。
それはやがて大きな組織と変わり、反政府軍と名乗っては各地でデモを起こしている。
ミシアはそのデモを手伝ったりラギ地区に物資を輸送したりしているが、ここ最近は政府の動きを監視するよう言われている。
ラギ地区の物資輸送制限を行い始めた政府への反発を利用して、武力行使をするために近々リゲルがラギに入る予定だった。
それに向けてギスタリの各地に散らばっていた反政府軍をラギに召集させている。
ミシアは反政府デモの参加を命ぜられ、数年前からギスタリ国に滞在している。
もちろん、マリーとして。
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