灰色のクレイ

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 私は思わず泣き出した。大切なひとを殺してしまったように。大声を出して泣いた。そして何度も謝った。  クレイたちが、私を見ているように感じた。罪悪感が押し寄せる。しかし違った。彼らのまなざしには暖かみがあった。まるで、何をも受け入れるかのような暖かみが。 「愛、だ……」  私は、クレイたちを愛していた。  クレイたちもそうあってくれればいい。  そっと手を伸ばすと、彼らは凹字形になって私を迎えてくれた。  愛し愛されて、愛になる。  そうして私は、他でもない彼の一部となれた。  私は、“I”になった。     〈了〉
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