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不定形で弾力があり、さながら粘土のようなそれを、私は「クレイ」と名付けた。
その表面は不透明な灰色で、加えて細かな粒が混じっているため、遠目からはただの丸い石のように見えるかも知れない。
事実、私がこれを発見したときは上記の理由からか何も気づかず、通り過ぎようとしていた。
しかし、それは動いたのだ。
「粘土のよう」と形容したが、それはゲームに出てくるスライムのようだった。
生物なのだ。
これは生きている。
むろん私は、疑った。
泥が流れているのか、はたまた不法投棄された化学物質か――いろいろと勘ぐってみたものの、これは自らの意思を持って動いていた。
クレイは2匹いた。
1匹が片方へ近づくと、もう1匹がそれを受け入れるかのように凹字形になり、そしてそれへ先の1匹が吸い込まれ――2匹は1匹になった。そこに継ぎ目などなく、もともと1匹であったかのように。しかしそのクレイは、2匹分の体積を有しているように思われた。
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