灰色のクレイ

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 そのとき、私を包んだのは恐怖ではなく好奇心だった。  私は買い物袋の中身を捨てて、そっとそれを包んだ。袋越しの触感は、手のひらに吸い付くようで、ひんやりとしていた。質量は3kgほど。そのときのクレイは両手に乗るほどの大きさだった。  その後、クレイを連れて帰宅した私は、空いている水槽にクレイを入れ、外から観察していた。  クレイは気まぐれにどろどろと移動してみるものの、やがて動かなくなった。眠ったのかもしれない。  これが本当に生物であれば、新発見とも言えるだろう。しかしそれは私の手からクレイが離れることも意味していた。  クレイをどうするべきか、私はまだ決めかねていた。  そして明くる朝、私は水槽を見て驚愕した。  水槽の中には5匹のクレイがいたのだ。個体によってサイズがバラバラであるものの、どれも前日のクレイよりは小さく、それらを合わせるとちょうど前日のクレイの大きさであるように思われた。
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