灰色のクレイ

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 私は3時間かけて、それらを観察した。  1匹のクレイ――これをクレイAとしよう――がクレイBに近づく。昨日のように1匹になる。また、別のクレイCがクレイDに近づき、1匹になる。  クレイには目や口、耳に類する器官は見当たらない。それだというのにどうして他の個体を探し当てることができるのだろう。灰色のこの身体には、もしかすると磁性のようなものがあるのかもしれない。  また、この一連の行為は捕食なのであろうか。凹字形に変化する個体が、近づいてくる個体を捕食しているようにも思われるが、しかし近づいている個体は捕食されんと近づいているようにも見える。  私はひとつの好奇心から、たった1匹だけ取り残されたクレイEに触れてみた。触れても害はないようだ。クレイEもまたひんやりとしていた。  クレイEをつまむと、私はクレイB'に近づけてみた。しかしクレイB'にはなんら変化はない。2匹が接触しても、何も起こらなかった。諦めてクレイEを置くと、彼はどろどろと移動し、全く別のクレイD'へと近づき、彼らはひとつになった。そしてその後、B'とD''もひとつになった。  もとのクレイになったのだ。
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