灰色のクレイ

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 彼らのエネルギー源は何か、と探ったことがある。  たとえば光――水槽全体を暗室にし、しばらく放置したものの、彼らは融合と分裂を繰り返した。たとえば空気――密閉した容器に彼らを入れても変化はない。  他にも、クレイの体内に大量のエネルギーを貯蔵しているのではないかという仮説や、循環型エネルギーを用いているという仮説も、すべて否定された。  甚だ不可思議だが、クレイは融合と分裂のみを目的とする生物だということだ。  クレイには雌雄というものが存在していない。クレイの融合を、生物間における生殖行為、分裂を出産と捉えてみるものの、やはりちぐはぐである。まるで地球に住むために存在しているのではないようだ。  このとき、すでに私の中ではクレイを手放すという選択肢が消えていた。  そして私は、最後にクレイの死というものについて考えた。クレイはエネルギー不足で死に至ることはない。であれば、どのように死ぬのか。  始めに、分裂しているひとつの固体にナイフを突き立ててみた。出血はなく、ただそこに小さな穴が空いたのみであった。その穴もナイフを抜くと共にふさがった。次にクレイを人為的に分裂させてみた。つまりは、ナイフで切り裂いたのだ。  しかし、1匹のクレイが2匹になるだけであった。
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