灰色のクレイ

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 カプセルの中にいた個体は、それこそ、石のようだった。  凹字形だったクレイは、カプセルの個体へと歩み寄ると、その側に居座った。やがて彼らとは別のクレアたちが、カプセルの個体のまわりを取り囲むように集まってきた。  そこで私は、  ――ああ、死んだんだ。  と思った。  クレイたちは、本当に死を悼み、悲しんでいるのだ。彼らは死を知っている。恐れるだけではない、道徳的な死を知っている。彼らには、愛があったのだ。  愛だ。  それだけで、すべての説明がつくかのように思われた。  彼らは愛を力に生きていたのだ。  彼らは愛し、愛されるために存在していた生物だったんだ。  だから融合する。そのために身を削ってでも分裂する。ほんとうの愛は、生物の本能を凌駕する。まるで人間だ。いや、人間以上だ。  彼らは、愛だけのために生きているのだから。
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