第1話 赤の少年と出会う

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「ん、ほら」 「わあ、ありがとうございます...!」 コトリ、と人参やじゃがいも、玉ねぎなどがごろごろ入っているカレーを目の前の人に差し出し自分も相手と向かい合わせになるよう席に座る。 ...なんで俺こんな事してんだろう。 ー時は遡って1時間前ー 「は、お腹...空いた...?」 目を瞬かせ目の前の人が発したその言葉を何度も反復し意味を理解すると失礼だとわかってるがコイツはホームレスか家出人間なのかと疑ってしまう。 「はい...もう4日は食べてないので、流石にお腹空きました...。」 「4日も!?」 「ん...約96時間」 「いや、それはどうでもいい」 なんで今知り合った人とこんな漫才もどきをしているんだろうと頭の片隅で勘えるも4日間なにも食っていないと知り思わず驚愕する。 「...お腹、空いて、しにそ...誰か助け....」 「あ、」 恐らく'助けて'と言いたかったんだろうか 最後の'て'を言う前にバタリと倒れたであろう目の前の人は何も言わなくなり辺り一面沈黙と化した。 「....ここの近くに交番って、ないよな。」 流石に雨の中腹減らしと思われる人を放っておくのは良心が痛むので、逡巡しながらも家に連れ帰ることに決めた。 そして、今に至るのである。 本当目の前の人を連れて帰ってきて良かったんだろうか。
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