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ニホンの人はよく舌が回るなあ
感心していれば男性は今だ何処かのお兄さんに話しかけていた。
「お兄さん!其処の貴方ですよ!其処の赤色の髪をしたお兄さん!」
「え、僕?」
「そうですよ!其処の貴方です!」
今だニコニコと笑っている男性に「んー、ならチョコバナナクレープを一つ」と頬を掻きながら言えば、畏まりました!とこれまた笑顔で返される。
接客態度いいなあ、とか思ってればまた僕の鼻に甘い匂いが掠める。
美味しそう。
「お待ちどうさまです!370円になります」
お釣りが出ないようしっかりお金を渡せば「有難うございました、またお越し下さい!」と言われた。
元気だなあ、...あ、美味しい。
クレープを頬張りながら歩いて行けばいつの間にか一通りから外れていたらしい。
「さっきまであんなに人がいたのにここの通りは静かだなあ」
何処か寂れた商店街。
辺りにはシャッターが閉じられた店ばかり。
何処と無く閑古鳥が鳴いたような雰囲気が漂っている。
よいしょ、と駐車場にあるカーストッパーに腰を下ろせば、再びクレープに頬張った。
チリン、チリンと鳴る風鈴の音色が風に乗って聞こえてきて、一層この空間が僕だけしかいないように感じる
しかしそんな空間は早々に破られた。
「誰..?」
空気が、明らかに変わった。
さっきまで穏やかだった空気が瞬く間に鋭く尖ったような...そう、これは
「...殺気」
確かめるようにポツリと噛み締めるように呟けば突然目の前に男が現れた。
そして、こう告げた。
「流石ですね、ピュロス...いいえ、No.197。」
それは淡々と、冷淡に、目の前にいる彼はとても無表情だった。
「何故、その番号を...?君、まさか'あちら側'の人?いや、確かめるまでもないよね、だってその番号を知ってるって事は明らかにそうだってことなんだもの。」
眉間を寄せブツブツと自問自答をしているも彼は何も話さない、黙り状態だ。
「...で、何のようかな?」
真っ直ぐと相手を見て問いかけて尚相手は黙り状態。
相変わらずの無表情も変わらない。
これは、話が進まない
彼は一体誰なんだろうか。
この若干張り詰めたような空気を無くそうと小さく嘆息し、また口を開こうとする。
しかし、それは叶わなかった。
彼の意味不明な言葉により。
「ーーNo.197、これより試験を開始する。」
「...え?」
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