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「きりーつ、きょーつけー、れーい」
と、なんともやる気のない号令をかける号令係の声を背にさようならー、と自分も少し気だるげに挨拶をする。
するといきなり肩に衝撃が走った。
「な、隼人ー、早く行こうぜ!」
この肩の重みはどうやら光樹らしい、声からしてわかる。
「ん、他に誰いんの?」
鞄を肩に背負いながら白杖を持つ。
するりと肩の重みから脱し歩けば後ろからタッタッと追いかけてくる足音がした。
「あー、鈴木とか安藤とか染谷」
「...寡黙な鈴木にボーッとしているマスコット系の安藤にゲーム好き染谷とか大丈夫なのか」
「まぁ、...多分?」
「オイ」
自信なさげに言葉を続け綴る光樹にすかさずツッコミを入れる。
とてつもなく、不安だ。
「お兄ちゃん...!」
いつも通りの声のトーンでお兄ちゃんと呼ぶ奴はきっとアイツしかいない。
「早瀬、まだ帰ってなかったのか?」
2年の下駄箱の前で律儀に待っていた妹にそう問いかければ「私が待ちたかったから」と素っ気なく返ってくる。
素直なのか素直じゃないのか、イマイチわからないのは俺だけか。
「んじゃ校門まで一緒に帰ろーぜ!俺と隼人はサ○ゼ行くから左に曲がっちまうけど」
そう言ってる光樹に対しチラチラと感じる視線。
「ん、待っててくれた事だしな。」
俺も異論はなかったし、寧ろ異論がある訳ない。
下駄箱から靴を出せば早瀬は「じゃあ、靴をとってくる」と俺らに一言告げ、去って行った。
「健気だねえ」
「...さっさとついて来ないと置いていくぞ」
靴を履きサッサっと玄関から出て行って1年の下駄箱に足を勧めれば慌てたような声が後ろから聞こえてきた。
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