12人が本棚に入れています
本棚に追加
*
コツ
コツ
夕方位の時間を位置するからか人が行きかう道を規則的な音を鳴らしながらスラスラと歩いていく。
歩く足音の数を多いのに誰ともぶつからないのは周りの人が気を使ってくれるからか。
ふう、とため息を尽きながら立ち止まれば夕風が吹き抜ける。
本当はトイレに行きたいってのは嘘だった。
ボーッとしてしまってなんの話をしていたのか聞き忘れていたっていうのは誰にでもあるだろうし今自分がその状態だ。
聞こう聞こうとしてもいつの間にかボーッとしてしまっていてもしかしたらこれは重症かもしれない。
あのまま彼処に居ても失礼だったし、こうして夜風ならぬ夕風に当たっている訳だが。
もう少し位大丈夫だろうと風向きとは逆方向に向かって歩いて行く。
すると、最近嗅いだようなそんな臭いが鼻先に掠める。
「これは...!」
気づいていたら俺は無我夢中にその嗅ぎ覚えのあること臭いの根源に向かって走っていた
勿論、白杖は持って。
今思えば人に何回かぶつかっただけで足元にある石とかに躓かなかったのは運がよかったんだろう。
この目が開けない体質になってからは本気でダッシュなどしたことがなかったからか直ぐに呼吸が辛くなってきた。
ああ、持久走の時
自分は関係ないからと気にも留めなかった呼吸の仕方、覚えとくんだった。
そんな考えも虚しくどんどん呼吸が辛くなっていく中ドンっと目の前の何かにぶつかる。
「おっと。...君は...」
何かにぶつかった拍子に尻餅を付きそうになるが誰かにガッと腕を掴まれ其れは阻止される。
助かった。
「あ、すみませッ.....ピュロス、さん?」
先程風に乗って、俺の鼻に掠めた臭いは確かにこの人の臭いだった。
しかしこうやって至近距離であろう所にいると幾つかの疑問が浮かんでくる。
そう、例えばこの人の声とか、口調とか、ーー異様な鉄の臭いとか。
「ッ、隼人くん!!!」
後ろから聞こえてきた最近聞いた声に頭の中でこんがらがっていたパズルのピースが一つ、カチッと音を上げハマっていったーー。
最初のコメントを投稿しよう!