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1話 赤の少年と出会う
物音が一切しないこの空間で2人の少年と少女が何処と無くピシリとした空気を漂わせ、話をしていた。
「お兄ちゃん」
否
「本当に1人で大丈夫?」
心配されていた。
窓が空いているからか双方の髪は風の向きに逆らわず、さらさらと流れ新鮮な空気が入ってきているにも関わらず2人の空気はやはり何処かピシリとした雰囲気を帯びている。
「だから大丈夫だって。これでもこの体になってから10数年は生きているんだ」
だから心配すんな。と最後に一言、もうこれで話は終わりだと有無を言わさない雰囲気を醸し出す目の前の人物は平均より大分低い身長をしている。
もしかしたら150cmもいっていないのかもしれない。
そして何よりも特徴的なのは通常では存在する筈のその2つの視力は存在してなく「お兄ちゃん、」と最初に呼んだ少女は其れを危惧して心配しているのだろうか。
その肝心の少女は「でも、だって、」など未だ心配をしているのかしどろもどろに話を繋いでいた。
そんな目の前の少女を見て...いや、聴いて男は一つため息をつき、また口を開いた。
「...駄目だぞ。ちゃんと塾行け?お前優等生だろ?な、
ーー早瀬」
早瀬と呼ばれた少女はその言葉にやっと押し黙り暫し沈黙が漂ったと思えば最後には渋々了承したようで「...うん、わかった」と声に出し言った。
その返事にやっとか、と次は安堵とも取れるため息を吐いては早瀬に早く塾に行くよう足した。
きっと早瀬は自身の兄が眼が視えない事、今日自分が塾の為一緒に帰れない事、そしてーーー
早瀬は窓の外の、雨がザアザアと降っている天候を一見してから自身の荷物を持ちドアの方へと向かった。
「じゃあ、お兄ちゃん、気をつけて帰ってね?何かあったら直ぐに言うんだよ、わかった?」
普段はほぼ無表情でクールで冷静なのに本当、心配性の妹だなあ。と眉を下げ頬をぽりぽりと掻きつつ一言「おう。」と呟けばそれまで心配していた早瀬も幾分か気持ちが和らいだのかさっきまで兄のことが不安で不安で綺麗な黒色の瞳が揺れていたのもいつの間にか直っていた。
「...行ってきます。
ーー隼人お兄ちゃん」
タッタッ、と床を蹴る音がした。
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