第1章

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(あー。でももう。いいや…) どんなに情けなくても、それが本当の俺なら愛してくれると言ったのは彼だ。無反応状態であることも言ってしまったし、何も誤魔化す必要はないと思えばもう、後はどうにでもなれ。だ。 「長谷川さん…痛いよ……」 ホントはもう、最初の頃より慣れてきたのか耐えられないほどの痛みではなかったが、彼の肩に顔を埋めて居るこの状態で、言えるセリフなど他にない。どこか甘えるように響いた自分の声が風呂場に広がる。 「オマエ…俺が居ない間、不摂生しすぎてたんだろ。だから体に悪いモンいっぱい溜まってんだよ…だいぶ解れてきたから、汗と一緒に出ていくと思うけど。今日は風呂上がったらたっぷり水分とって寝ろ」 (不摂生って……) 仮にも恋人に先立たれた(と思っていた)人間が、規則正しく健康的な日常を送れるはずがないだろう。 睡眠不足・食欲不振・アルコールの暴飲…それこそ 『不摂生』 の見本のような暮らしをしていた自覚はある。鍛え上げた自慢の体もその頃は一回りほど肉が落ち、心も体も憔悴しきっていた。 (他人事みたいに…言うなよなぁ…) そうさせたのは誰だと恨みがましく思いながらも、俺は長谷川さんの背中に腕を回し包み込むように抱きしめた。 「貴弘?」 「ん。…ちょっと」 「気分が悪くなったか?」 「んん。違う。ちょっと…こうしてて」 しなやかな彼の体を抱きしめるのは久しぶりで、相変わらずスベスベで抱き心地の良い感触をじっくりと味わう。 長谷川さんは俺の腰に手を回し、今度は尻上の辺りをさするようにマッサージし始めた。 「……気持ち良い」 「だろ?」 満足げな彼の声がちょっと笑いを含んでいる。 「何…笑ってんの」 なぜか照れくさく咎めるように聞けば、 「貴弘は…可愛いな」 と、耳元で囁かれてしまった。しかも笑いを含んだその声が、先ほどのそれよりずっと甘く、嬉しそうに響いたものだから、より一層いたたまれない。 「なっ…なに。それ」 「言葉の通りだよ」
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