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「だから。甘く見られんのと甘やかされんのは違うだろ! オマエは、俺を作り笑いや嘘で誤魔化そうとした。だろ?」
「っ………」
「それが甘く見ンなってコトだよ。俺がどんだけ意識集中してオマエのこと見てきたか知らないワケじゃないくせに、気付かれないと思われてたのは、俺がその程度の人間だってオマエに思われてたってコトじゃないのか?」
「長谷川さん…」
「貴弘。簡単なことだよ。オマエだって俺が何かを気にしながらもそれを言わずにいたら気付くだろう? どうしたんだろうって思うだろ? それでもずっとそのまま俺が何も言わなかったらどう思うんだよ?」
「……ゴメン」
まったくの正論に手も足も出ない。
「……で?」
「ん?」
「なんなんだよ? ここ数日のよそよそしさは」
微かに顎を上げた長谷川さんが手の甲で額の汗を拭いながらチラリと俺の困った顔を流し見る。
「………ダメ。なんだ」
「言えないってのかよ」
目の前の美形にユラリと怒気がみなぎった。
「ち、違くて……ッ」
両手を振ってそうじゃないと弁明すると、じゃなんなんだよと言うように彼が軽く首を傾げる。
「ナニが……ダメで……」
「え?」
何が? と彼の顔に書いてある。
「……その………勃たないん…だ」
長谷川さんは、え? とか、あ! とかを数回言った後、一定の角度に視線を下げた。
「そんな見ないで………よけい縮みそう……」
「んー…。ちょっとごめん」
「え? 何? 何? イッ! 痛っ! 痛いよ、ちょっとっ」
「あー。やっぱ痛いんだ……」
じっと湯船の中を凝視していた彼が急にそこへ手を伸ばして来たと思ったら、俺の膝を抱え、足の付け根から3センチほど離れた所を左右同時にグリグリと親指の先で押し始めた。その飛び上がりそうな痛みに風呂のせいだけじゃない汗が噴き出してくる。
「ねぇ、ちょっと勘弁っ…くぅっ…痛!…痛い!マジで痛い…っ」
「うわぁ…中がゴリゴリいってるよ…もうちょっと解したら気持ちよくしてやるから我慢しろ」
「解したらって……」
もう、泣いているのか汗なのかわからないくらい顔中びっしょりだ。タラタラと頬を伝い流れる汗は、俺の両膝を抱えた長谷川さんの肩へと落ちていく。まるで長谷川さんに抱かれているようなこの体勢もセリフもかなり勘弁して欲しい。しかも痛みを耐えるために必死で彼の腕に縋りついてしまうものだから、情けないことこの上ない。
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