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ニッコリと極上の微笑みを見せて 「ハイおしまい」 と言って軽くキスを盗むと、長谷川さんは風呂を出ていってしまった。たっぷりと汗をかいた体はマッサージを受けたせいかズッシリと重く、ぬるくなった湯船の中で心地よい眠気を誘ってくる。それでも何気なく触れた息子は無反応で、疲労感とやるせなさに苛まれながら俺は長谷川さんが冷えたミネラルウォーターを持ってくるまで、つかの間の眠りについた。
(熱い……)
「…っ…あぁ………はぁ…」
(なんだ…?)
自分の荒い息づかいに気付いて目を覚ました。腰の奥が熱くて、こみ上げる何かに突き動かされそうになる。徐々に覚醒していく意識が衣擦れの音を聞き取った。
「長谷川…さん…?」
「おはよ…随分よく眠ってたな」
「何……してんの」
「…見て…わかんない?」
「いや…見なくてもわかるけど……ッ…」
俺が眠ってる間に長谷川さんがそんな行為に及ぶなんて考えもしなかったから、この現状は自分が作り出した都合の良い夢なんじゃないかとさえ思ってしまう。
「うん…いい感じ……」
うっとりと囁かれるセリフに俺は完全に覚醒し、ハッと飛び起きた。
「うわっ何だよ!」
「治ってんじゃん…俺」
いきなり起きあがった俺に長谷川さんが驚いて咄嗟に離した。そのせいでゆらゆらと揺れる息子が艶やかな頭を振って 『ひさしぶりー』 とでも言ってるように見える。
「さっきからじゅうぶんそうなってたろ。ほら、いいから…寝てろよ」
息子との感動の御対面に声もなくじっと見ていると、トンッと肩を押されて俺はドサリと元の位置に落ちた。見れば長谷川さんは朝一の太極拳を終えてシャワーを浴びたのだろう、バスローブ姿で髪が先端から雫が落ちそうなくらいに濡れている。
「まったく。こんなにしといて…なにが無反応だ」
「っ……」
「もう…ダメ」
「なんだよ…もう出ちゃうのか?」
「見てるだけなんて…やっぱ無理…」
「あ…コラ…今日は俺が…」
「ちょっと……黙って」
ゴロリと逆転して彼を組み敷き口付けを解くと鼻先が触れ合う近さで瞳を覗き込む。久々の欲情に俺は自分の中にある危険な部分が目を覚ましそうな気配を感じた。
「優しく…抱けないかもしれない」
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