第1章

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元々自分には嗜虐的なところがあり、彼の妖艶さに引き込まれてしまうと余計に押さえられなくなってしまうことも度々あった。その度にひどく手荒く抱いてしまうのだが、彼はその激しい欲望が嬉しいとさえ言ってくれる。 とは言え、ドイツ人である祖父の血を継ぐクウォーターの片鱗がかいま見れる唯一の特徴、感情が高ぶったときにだけ現れるグレイの瞳で覗き込まれ、彼は一瞬脅えた表情をした。 「良い…よ。抱いて…貴弘」 ビターチョコの瞳を震わせながらも、嬉しそうに笑うから、もうどうにも止められなくなってしまった。 (食いたい。マジで) ライオンのようにガブリとこの肉に食らいついてしまいたい。身も心も食い散らかし、満足げに手先に付着した血肉を舐め取る瞬間の喜びはどれほどのものだろう…。彼の全てを手に入れたい。ただ優しく愛し愛されるだけでは足りない。もっとそばに、もっと深くに…。 「あぁっ………痛っ……」 「あ…ゴメン…」 欲望が先行し、もっともっとと体が勝手に彼を取り込もうとする。至る所に舌を這わせ、吸い上げるうちに加減も忘れて歯を立ててしまった。瞬間あげた長谷川さんの声に理性が引き戻され、見れば白い肩がその部分だけ赤く鬱血してきている。 以前から彼との約束で、手酷く抱いても謝ってはいけない事になっている。さっきは痛いと言われて反射的に謝ってしまったが、今、噛んだことに対して謝れば約束を破る事になるだろう。俺は、言葉にせずその部分に優しくキスすることで思いを伝えた。 (なんでこう…突っ走っちゃうかな…俺は) 長谷川さんと付き合う前までは、こんなに心乱されるセックスなどしたことなかったのに…。どうしてかこの人の前だと理性が効かない。 (麻薬並みだよ…長谷川さんのフェロモン) 触れるだけのキスを肩口に何度も押しつけていると、クスリと笑った長谷川さんが俺の頭を抱えるように腕を回して耳元に囁く。 「どうした? 急に大人しくなったな…野獣になるんじゃなかったのか?」 「だって…」 いくら食べてしまいたいほど欲しているとしても、さすがにセックスで怪我させるわけにはいかないだろう。野暮な内容は言葉に出来ず、あちこちに唇を落としながら甘えるように互いの頬を擦り寄せた。 「来いよ…貴弘…」 (ああ…ヤバイ)
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