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長谷川さんが膝立ちになってバスローブの裾を持ち上げる。俺に背中を向け、足の付け根から尻へのラインが見えるギリギリで裾をヒラヒラとはためかせた。
「貴弘…」
片手でバスローブの裾を押さえたまま上半身をゆっくりとベッドに沈める。
「…っ」
カァァーっと血が全身を一気に駆けめぐるのがわかる。俺は初めて自分の目の色がグレイに変わる瞬間を意識した。
「はぁ……ぁ……」
「長谷川さん…? 大丈夫?」
遠くに行ってしまったまま戻れないのか、意識がはっきりしていない彼を優しく呼び戻す。
(長谷川さんのイッた後の顔。たまんない)
気怠く眇められた眉と荒い吐息。上気した頬に汗で貼り付いた髪。卑猥に開かれた赤い唇が何かを伝えようと僅かに動きを見せる。
「ん? 何? 長谷川さん」
「すっ……った」
普段の彼なら言わないようなセリフだった。それほどまでに吹っ飛んでしまったのだろうかと思うとちょっと嬉しい。
「そんな…良かったんだ?」
「……ん」
目を閉じたままコクンと頷いている彼はそのまま眠りに落ちてしまいそうで。
「ねぇ、もっかい」
「や……ぁ…だ」
「もう。いいよ。じゃあ寝てて、勝手にするから」
「……ん…ぁ」
「ゆっくり…するから。……そのまま目を閉じて、俺のことだけ感じてて」
彼の顔を見つめながら髪を撫で、頬に、額に、鼻先に軽いキスを落としていく。後戯ともいえる甘い行為に長谷川さんがトロリと溶けた眼差しで俺に抗議する。
「キスは…唇に」
「ん? そこにキスしたら第三ラウンド突入しちゃうよ?」
もう、眠いんだろう? と笑いながら意地悪くキスを拒むと、彼の腕が俺の首に絡みつき引き寄せられた。
「もう。起きた……」
「ンッ…」
それでも食むようなキスは快感を煽るものでは無くて、やはり彼もじゃれ合っていたいのだろうと思った。
「大好きだよ…とーる」
「ん……俺も…大好き、貴弘」
「ね、…もうしばらく…こう…してて良い?」
快感を求めるわけでも引き出すワケでもない怠惰な動き。それでも彼の感触を愉しみたくて。
「うん。まだ…そこにいて。平気だから」
「じゃ、そのまま眠れるように後ろからにしようか」
スプーンが重なり合うように横になったまま彼を抱きしめる。
左腕は彼の首の下に、右腕は彼を抱きしめて彼の左手と手を繋ぐ。
「なんか……すげぇ幸せ」
「……うん」
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