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視線が徐々に上がり、強い瞳にまっすぐに射抜かれる。覚えのある強烈な視線。
「怒っても泣いても良いよ、どんなに醜くても情けなくても、それが本当の貴弘なら俺は愛せる。でも、どんなにキレイに笑ってたってそれが本当の顔じゃないなら欲しくないんだ…いつだって俺には本心をさらけ出してくれよ。ずっと…一生一緒に生きていこうって言ってくれたろ? だったら…もう、俺に作り笑いなんて…するなよ」
「長谷川さん…」
「俺にそんな顔…見せるなよ。そんなに俺は頼りないのか? 悩みのひとつも話せないのか? それともやっぱり俺には話せない悩みなのか…?」
「違う。違うんだ………」
気持ちが冷めるなんてことは有り得ない。何をどう説明したら良いか彼の目をみつめながら言葉に詰まってしまう。
「貴弘、……俺のこと………甘く見てないか?」
「え…?」
強い視線のまま俺を捕らえて離さない長谷川さんの表情が読めない。今までに見たことのないこの顔は、もしかしたら本気で怒っているのかもしれない。
(マジ…ビビる)
美形に真顔で睨まれる迫力というものがこれほど凄まじいとは知らなかった。それが惚れた相手ともなれば威力も1.5倍増しだ。
「俺さ…。確かに体格はオマエよりずっとちっちゃいし、この歳でまだ学生だし、親が金持ちだから家賃ナシでこんな一等地に住んでるし、まったく頼りない坊ちゃんに見えるかもしれないけどさ」
「………」
迫力に気圧されて言葉が出ない…。
「本気出せば体格差なんて感じさせないだけの体術は身につけてるつもりだし、それなりの鍛え方をしてきたから体力だってある、朝のバイトだって時間給よりもやり甲斐で決めた。それに一応このビルの管理者だから、業者とのやりとりも税金関係も、まるまる俺が面倒みてる。本業の研究だって作品提出の期限遅らせたことないし、毎回評価が上がらなかったこともない。…ついでにオマエより三つも年上だ」
実際彼の言うことに偽りはない。
「……腕っ節も根性も適応能力もあって、その上自分の才能を活かした道を進んでるなんて…完璧だね。…俺に甘やかされるの…そんな嫌だったんだ?」
年下の男に可愛がられるのがそんなに屈辱的だったのかと皮肉めいて問えば、
「違う…貴弘にだけ、甘えたいんだよ」
と妙に落ち着いた声で返された。
「だって甘く見てんだろって……」
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