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「これがって失礼ね」
ごもっともです主任母。
優真さんも落ち着いたみたいで、目に溜まった涙を指で拭っていた。
「あの、綾瀬春花と申します」
今更ながらの御挨拶。
「彼女?」
お兄さんの一言に首を振って訂正しようとすると
「悪い?」
と主任が返した。
え?と思わず隣を見ると顔が若干赤い主任。
言った本人が照れるとか反則じゃないでしょうか。
その顔を見てさらに体の温度が上昇するのを感じた。
「さっきね凄いもの見たのよ。
私人様の告白初めて見ちゃった。しかも『主任の家庭を』「あーーーーーー」」
慌ててお姉さんの言葉を遮るように声を発した私。
恥ずかしいから言わないで!
そんな私の奇行に戸惑う篠田家一家。
ああ、埋めて。今すぐ私を埋めて。永遠に埋めて。
「優真さん苛めないで」
「だってぇ可愛いんだもん。
あ、そろそろご飯だし春花ちゃんだっけ?一緒に食べてかない?ね、お母さんもお父さんも良いですよね?」
なんだろう、この篠田家の力関係?
多分一番強いのはお母さんなんだろうけど、優真さんの有無をも言わせない感じはお母さんをも凌駕しそうな勢い。
『お客様は座ってて』と言われ篠田家に囲まれて食卓に着く私。
居心地が悪すぎる。
食事の準備が整い、話題は私の事に。
そりゃそうなるよね。
しかも思い出したのか優真さん食事中もずっと笑ってるし、事の顛末全部喋っちゃうし。
誰でもいいから今すぐ私を抹殺してくれないかな。
数十分前の勢い告白した私を消し去ってしまいたい。
それにしてもうちも賑やかな方だと思ってたけど篠田家その上を行く。
ってか優真さんが一人で賑やかなんだよね。
2回遭遇したときはとても上品そうだったのに、ギャップが凄すぎる。
「ただいまぁ」
この声は!
「あら、いらっしゃい」
邦子さんの目が怪しく光ってる様に見えたのは私の今の精神状態が正常ではないせいだと誰か言ってください。
「お帰りなさい。
あ、この子は邦隆君の彼女で『春花ちゃん』なんだ知ってたの?
でね、さっきね」
「優真さんもうごめんなさい。許してください」
恥ずかしくて堪らないのに、またあの話をされるかと思うともう二度とここに来ることが出来なくなってしまう。
頭を下げると『残念』と諦めてくれた・・・と思ったのに。
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