第4章

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「くしゅん」 いくら暖かくなり始めたとはいえ、まだ肌寒い中脱ぎ捨てたワンピース。 体温は奪われ、自分で腕に触れると冷たくなっていた。 慌てて洋服を着る。 「くしゅん」 やばい。 出始めたくしゃみに『風邪引いたかも』と急いで薬を飲む。 風邪はひき始めが肝心。 お風呂でも溜めて温まって今日はさっさと寝てしまおう。 今日位ダラダラしてたって家族みんな遅く帰って来るだろうから咎められないだろう。 「くしゅん」 朝起きると、昨日の成果も乏しく、鼻が詰まってくしゃみが止まらない。 熱はないから仕事に来たけれど。 上手く息が出来ないせいか、頭がちっとも働かない。 「朝より酷くなってない?」 お昼ご飯を食べながら新子が心配そうに私を見る。 「あ~~~。どうだろ。 とにかく息が苦しくてさ」 「見事に鼻声だもんね」 「なんか寝起きのおかまみたい」 「言えてる。 今日はさっさと仕事終わらせて病院行った方がいいんじゃない?」 「そのつもり。 昨日薬飲んだんだけどちっとも効いてないみたいなんだよね」 ジュルジュルと鼻をすする。 吸いすぎで息が詰まる。 「は~~~苦しい」 「にしても何で風邪?」 洋服も着ずに居たからなんて理由言えるはずもなく。 「なんでだろうね。どっかに風邪菌があったのかも」 「あ~~。ホテルね。どうだった?」 食事会の事を言っていたから新子が興味津々に尋ねてくる。 「どうって別に普通に顔合わせして食事しただけだし」 「かっこいい兄とか居ないの?」 「一人っ子だって」 「なんだ。残念」 「残念って何よ」 「いや、兄でもいりゃあさ誰かいい人紹介してもらえるかもしれないじゃない」 「嫌だよ。にぃの結婚相手の知り合いとか」 「そんな事言ったって出会いってそうそう落ちてないんだしさ」 「別に出会い求めてないって・・くしゅん」 「ちょ、うつさないでよね」 「貰ってよ。そしたら早く治るし」 「やだぁ」 くしゅん、くしゅん、くしゅん。 立て続けにくしゃみが出てごはんどころじゃない。 「本格的だよ。もう帰れば?急ぎ仕事ないんだったらさ」 「まぁね。そうしよっかな」 ジュルとまた鼻をすする。 味もしなくなってきて食べる気力も削がれてるし。 御馳走様と手を合わせる。
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