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「どうぞ」
あの綺麗な人が目の前にお茶を差し出した。
「どうも」
ぺこりと頭を下げる私。
そりゃ、家なら奥さんが居て当然だし分かってて来たんだけど直接過ぎてどうしていいのか分からない。
「邦隆君と同じ職場?」
「あ、はい。主任にはお世話になってます」
何故か私が座る二人掛けのソファーの隣に座る綺麗な女性。
主任は着替えてくると行ったっきり姿を現さない。
「ママぁ、お腹すいたぁ」
昨日病院で見た男の子がトコトコとやって来た。
「邦人、ご挨拶」
ママに言われて邦人君が『こんにちは』と頭が床に付くんじゃないかって位下げて挨拶をしてくれた。
可愛い。
こんな可愛い子が居るのに、主任、本当に最低だ。
こんにちはと返すと、ニコっと笑って『ママ、お腹すいた』と改めて告げると『はいはい』と立ち上がって邦人君の手を取った。
「どうぞ、ごゆっくり」
威嚇とも取れるその笑顔。
美人が微笑むとそれはとても怖いものだと初めて知った。
「悪い。待たせた」
主任がスーツ姿からラフな格好になってやってきた。
格好いい・・なんて思う私は、かなりやられてる。
ダメだよ。既婚者。この人は最低な男。きっちり言わなきゃ。
キュっと唇を噛みしめ拳を握る。
「で?話って」
「主任の事好きです」
対面するソファーに座るか座らないかのタイミングでそれを言うと主任の動きが止まる。
奥に奥さん居るから気が気じゃない?
でも別に私の気持ちを伝えに来ただけで、玉砕しに来ただけで・・・
だから・・・
「主任の事好きです。
主任が私をからかったって分かってます。
これは私の気持ちを昇華させるための告白です」
「からかうって・・・俺は本気で」
「あんな綺麗な奥様と可愛いお子さんが居るのに?本気って何ですか?
とにかく、隠したくなかったので今日はそれだけ伝えに来ました」
奥さんがこちらを伺うようにして見ていたので立ち上がる。
「妻帯者を好きになったのは今回が初めてです。
好きだと気が付いたのは最近です。
今日はすみませんでした」
「ちょっと待て!誰が妻帯者だよ」
「主任です」
「ちょっと待って?それってもしかして私?」
奥さんが近づく。
「あの、告白とかしたくせにって思うかもしれないですけど、主任の家庭を壊したいとかじゃなくて」
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