第4章

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連絡先知らなかったんだし・・・ 『篠田邦隆』 そう追加された電話帳を見て、顔がにやけてしまう。 「そろそろ帰る?結構な時間だけど」 時間を確認すると、21時を過ぎていた。 二人っきりで居た時間が思いのほか長かったみたいだ。 でもあっという間だった・・・ まだ帰りたくない。なんて思ってしまう辺り主任の毒に侵されてる気がする。 「あ!」 突然大声を上げた私に主任が『何?』と返す。 「家に連絡するの忘れてた」 ご飯要らないって言わないと母親からそれはそれは大変なお咎めがある。 主任の事で頭がいっぱいでそこまで思考が働かなかった。 「今からする?」 「ううん。止めておきます。 電話して怒られて家に帰ってからも怒られたんじゃ割に合わないですから」 「俺が連絡しようか?」 「いえ、大丈夫です」 何て連絡するつもりなんですか!と突っ込みを入れたかったけれど。 「綾瀬」 名前を呼ばれて主任と目を合わせると、フワっと笑う。 チュとリップ音。 驚いて目を開けたまま。主任の瞳に自分が写りこむ。 「ね、綾瀬」 「なんでしょうか」 顔が物凄く近いです・・・ 「好き?」 何、この人! これが世に言う羞恥プレイって言うものなの! あんな恥ずかしい告白をした私に対して『好き?』なんて聞く? 返事をしない私の頬をギュっと抓る。 「痛いです」 「綾瀬、好き?」 「---好きですけど、悪いですか」 プイっと横を向くとフハっと嬉しそうに笑う主任。 どうしてこんな嬉しそうな顔をするんだろう。 だいたい私にだけ『好き』とか言わせてるけど自分が一体私の事どう思ってるのか言わないのは卑怯じゃないんだろうか。 「主任は?」 「何が?」 「何がって・・・」 「ほら、早く行かないと我が家の悪魔二人組が本当に部屋に乗り込んでくるぞ」 近かった顔が離れる。 あの二人が乗り込んでくるのは嫌だけれど、主任が何も言ってくれないのはもっと嫌だ。 「主任は・・・」 って、どう聞けばいいの? 私の事好きですか?って? 「何?」 「何でもないです・・・」 キスしたけれど、それが何の意味があると言うんだろうか。 「言いたい事言わない訳?」 主任が部屋のドアを開ける。 待って!行かないで。ちゃんと聞かせて! 「主任は・・私の事・・・好きですか?」
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