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「どうしていいかって?」
「綾瀬が前の恋愛をきちんと終わらせることが出来たのか分からなかったから。
勢いで『付き合わないか』って言っておきながら、心が伴ってない恋愛なんて出来る訳ないだろ?
自分が出来ないものを綾瀬に強要出来る訳がない。
だからってただ見てるだけっていう事も出来ないで微妙にちょっかいだけ出して存在だけアピールするっていう姑息な手使った。
こっち向きそうで向かない綾瀬に苛立ちながら、だからって自分からどう行動していいか分からないままでいた・・・悪かった」
―心が伴ってない恋愛なんて出来ない
確かにそうだ。
自分の中に芽生えた感情があっての恋愛だと思うから。
主任の気持ちが手に取る様に分かる。
「でも・・・主任が変にちょっかい出してくれたお蔭で主任の事ちゃんと意識しましたし、好きになりました。
あの、ありがとうございます」
「まさか礼を言われるとは・・・」
繋がれた手に力が入る。
のんびり二人で歩くこの時間がとてつもなく愛おしい。
「本当にいい訳?」
「今日は大丈夫です。ありがとうございました」
うちの親に説明するという主任を断る。
いい大人だし、悪い事してた訳じゃない。
素直に謝ればいいだけなのに、わざわざ主任に出てもらうのは申し訳ないし『彼氏?』なんて母親にからかわれるのは嫌だ。
それにこの時間ならにぃも帰ってきてるはず。
にぃと面識がある以上、恥ずかしくてとても今日は主任と家族を会わせられない。
「早く入らないと風邪良くならないぞ」
私が中に入るまで動きそうにない主任。
「おやすみなさい」
そう言って手を離す。
バタン
家のドアを開けて中に入る。
まだ暖かい手、体に移った主任の香り。
「お帰り」
パックをした母親がひょこっと顔を出す。
「ただいま・・・ごめんなさい」
「連絡は早くしなさい」
「はい」
「ご飯は?ってもちろん食べてきたのよね」
「はい」
「後片付け、残しておいてあるからよろしくね」
何も言わずにいると、パックの奥の目がギョロっとこっちを睨む。
「何でもないです。後片付けさせて頂きます」
「よろしい。
それじゃ寝るから戸締りもよろしくね」
廊下の奥に消えて行く母親の後姿を見送り、キッチンに行くと全員の食器がそのまま置いてあった。
イジメだ。
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