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茶碗を洗っていると、風呂上がりのにぃがキッチンに入ってきた。
「帰ってたのか」
「ん。さっき。
てか何で全員分?」
「今日は珍しく全員が同じ時間に飯食ったから」
「マジで。今日に限って」
「まぁ連絡しない方が悪い」
「---確かに。すっかり忘れてた」
「良い事あった?」
「なんで?」
「罰受けてんのに鼻歌」
無意識!
「歌ってた?」
「がっつりと」
浮かれてるのね、私。
「まぁ、落ち込むよりいいんじゃねーの」
冷蔵庫から発泡酒を取り出して飲むにぃ。
なぜかそのまま椅子に座る。
「何?」
視線を感じて尋ねると『別に』と返ってきた。
とりあえず茶碗を洗い終え、タオルで手を拭いていると
「邦隆」
「はい?」
主任の名前にビクっとなる。
「さっきの邦隆だろ。お前と来たの」
「見たの?」
「見えた。
何?お前ら付き合ってたの?」
「付き合う事になったの」
「へぇ」
そんだけ!
いや、突っ込まれても困るんだけど。
「そりゃ、鼻歌の一つも出るわな」
「いいでしょ」
「悪いなんて言ってないだろ」
「もう寝れば!」
「まだ飲んでるだろ」
「私は風呂に入ってくる」
「お前」
「何よ」
「大丈夫か?」
「何が」
「----恋愛下手だろうが」
「恋愛下手って」
「泣く目にばっか合いやがって」
「泣く目って・・・」
「今度は泣くなよ」
「泣いてないし」
「さて、寝るか。
罰ついでにコレ捨てといて」
テーブルに飲み干した缶を置いてそのままキッチンを出て行ったにぃ。
「ちょ、自分の物は自分で」
「おやすみ」
ち・・・くしょーーー。
だいたい何よ。恋愛下手って。
泣く目にばっか合ってないし・・多分・・・
泣いてないし・・・
よく見てるなぁ。
家族の前じゃ泣いたことなかったのに。
恐るべしゴリラ馬鹿。
アルミ缶を片手で潰してごみ袋に入れる。
にぃこそ恋愛らしい恋愛今までやってきてないくせに。
人にどうこう言える立場かっつうの。
『今度は泣くなよ』か・・・
そればっかりはどうなるか分からないけれど、にぃなりに私を心配してくれてるんだろうな。
大丈夫・・と、ハッキリ言えないけれど、泣かないようにしたい。
その為には、何をしたらいいんだろう。
どう付き合っていくのが正解なんだろうか。
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