第4章

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茶碗を洗っていると、風呂上がりのにぃがキッチンに入ってきた。 「帰ってたのか」 「ん。さっき。 てか何で全員分?」 「今日は珍しく全員が同じ時間に飯食ったから」 「マジで。今日に限って」 「まぁ連絡しない方が悪い」 「---確かに。すっかり忘れてた」 「良い事あった?」 「なんで?」 「罰受けてんのに鼻歌」 無意識! 「歌ってた?」 「がっつりと」 浮かれてるのね、私。 「まぁ、落ち込むよりいいんじゃねーの」 冷蔵庫から発泡酒を取り出して飲むにぃ。 なぜかそのまま椅子に座る。 「何?」 視線を感じて尋ねると『別に』と返ってきた。 とりあえず茶碗を洗い終え、タオルで手を拭いていると 「邦隆」 「はい?」 主任の名前にビクっとなる。 「さっきの邦隆だろ。お前と来たの」 「見たの?」 「見えた。 何?お前ら付き合ってたの?」 「付き合う事になったの」 「へぇ」 そんだけ! いや、突っ込まれても困るんだけど。 「そりゃ、鼻歌の一つも出るわな」 「いいでしょ」 「悪いなんて言ってないだろ」 「もう寝れば!」 「まだ飲んでるだろ」 「私は風呂に入ってくる」 「お前」 「何よ」 「大丈夫か?」 「何が」 「----恋愛下手だろうが」 「恋愛下手って」 「泣く目にばっか合いやがって」 「泣く目って・・・」 「今度は泣くなよ」 「泣いてないし」 「さて、寝るか。 罰ついでにコレ捨てといて」 テーブルに飲み干した缶を置いてそのままキッチンを出て行ったにぃ。 「ちょ、自分の物は自分で」 「おやすみ」 ち・・・くしょーーー。 だいたい何よ。恋愛下手って。 泣く目にばっか合ってないし・・多分・・・ 泣いてないし・・・ よく見てるなぁ。 家族の前じゃ泣いたことなかったのに。 恐るべしゴリラ馬鹿。 アルミ缶を片手で潰してごみ袋に入れる。 にぃこそ恋愛らしい恋愛今までやってきてないくせに。 人にどうこう言える立場かっつうの。 『今度は泣くなよ』か・・・ そればっかりはどうなるか分からないけれど、にぃなりに私を心配してくれてるんだろうな。 大丈夫・・と、ハッキリ言えないけれど、泣かないようにしたい。 その為には、何をしたらいいんだろう。 どう付き合っていくのが正解なんだろうか。
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