第1章

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「ホントにわかってないの? 自分が誘われてたの」 「泳ぎにだろ? あー。ロッカーにいたヤツは家に来いってしつこかったよな、でもアイツも最初は泳ぎに来いってしつこかったんだよ」 「………いや。ってゆーか……」 「ん?」 着てる服を脱ぎながら不思議そうに俺を見つめる澄んだビターチョコの瞳。 (俺は奴らに同情すべきなんだろうか……) 「俺、風呂はいる。あの区民プールももうちょっと金掛ければいいのにな、シャワー室もないなんてさ」 (あんなところにシャワー室なんてあったら…っ) 「長谷川さんっ」 俺は慌ててバスルームへと消えた彼を追いかける。 「絶対にあそこのプールは出入り禁止だからね! シャワー室が出来ようが、サウナが付こうが、行っちゃダメだよ! わかった!?」 あー、サウナも良いなー。と暢気な声がバスルームから届く。 (なんで女心がわかるくせに男心がわかんねーんだよっ) それが今日会った輩達とはあまりに思考が違うため考えが及ばないんだと俺が理解するまでに、この後たっぷり数日かかった。 (俺が居ない頃はどうしてたんだろう…あのひと) バスルームから聞こえる鼻歌は楽しげで、まるで夏休みのプールを楽しんできた子供のようだ。天然の美形。それはある意味最強で、もっとも手の出しにくい存在なのかも知れない。俺は今更ながら恋人のポジションを手に入れられた自分のラッキーさを噛みしめた。 (コレが夢じゃ…ありませんように) ぐったりと疲れた体を固めのソファに預け、心地よい眠りに落ちながら、俺はそんなことを思っていた。    おわり
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