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ぎりっと締め上げた襟元にも動じず、ただ花木はしかめっ面で視線を逸らしている。
「答えなさいよっ!」
酔った勢いで叫ぶと、何やら花木がぼそっと呟いた。
「…こういう女だよ」
「こうやって恐喝してくるような女だよ。
そんでいっつも俺の前で他の男のせいで泣いてさぁ、そんな傷心の隙だらけのとこ入り込むような真似できないしさぁ!
それでも、ずっと笑っててほしいような女だよっ!」
そして胸元のあたしの手を振り払い、逆にあたしに体重をかけるようにして見下ろしてくる。
「何で自分を傷つけた男のために泣くんだよ。笑ってろよ…っ」
そう言う花木のほうが泣きそうだった。
いきなり感情を爆発させた花木に圧倒されていたあたしは、その言葉を聞いてやっと爆発の意味を知った。
「…あたしが恋愛相談とか愚痴とか言ってるときに花木はずっとそう思ってたの…?」
自分が好きな相手に、別の誰かの話を聞かされる。考えると酷な話だ。
それをずっとあたしは花木に引き受けてもらっていたのか。
ごめん、と言いかけたタイミングで花木がぎゅっと顔を歪めた。
「あー…カッコ悪っ。凜の意識が俺に向くまで言わないつもりだったのに」
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