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そう感じるとたまらなくなる。
握りつぶしたラッピングから小さなトリュフチョコを一粒取り出して---あたしは花木の首に抱きついた。
唇で花木の口にチョコレートを押し込む。
花木は目を見開いて、そしてトリュフのココアパウダーに軽くむせて、でも突然のこの行動を受け入れてくれた。
あたしは泣きながら、ほとんど唇同士が触れ合った状態で囁く。
「好きにして…好きにさせて。
あたしに花木のこと友達以上に好きにさせて、大事にさせて!」
ねぇ、花木。
あたしはその好きって気持ちに甘えてもいいのかな。
ごめんね、いつもわがままで甘えてばっかで。
でもあたしは、そんなあたしを好きでいてくれたあんたを好きになりたい。
花木はただ黙って聞いてくれた。
そしてそっとあたしの背中に手を回して、ゆっくりとあやすように優しく叩く。
凜、と穏やかな声があたしを呼ぶ。
「凜、そんな風にヤケにならなくて大丈夫だから。
ゆっくりでいいよ。俺はいくらでも待つからさ」
そして、バレンタインデーが明けた朝には。
とろけるチョコレートのように、甘い空気がふたりをふんわりと包み込んでいた。
Fin.
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