ふられた女

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別れてほしい。 いつも二人の待ち合わせ場所にしていた噴水のそばでいきなりそう告げられた。 「お前より好きな女ができた」 「え…ちょ、どういうこと、」 説明してよ、と言い終わるより先に彼は迷いなくそれは滑らかに口を動かした。 「今好きな子は俺がいなきゃダメなんだ。 お前と違って気が弱くて可愛げがあって、繊細でよく気のつく子…俺が守ってやらなきゃ」 そんなことをきりっとした目で話すこの男の神経を心底疑った。 何よ、何でそんなこと言うの。 何でわざわざ今日言うのよ。 喜ぶといいな、なんてチョコレート作ってたあたし、馬鹿みたいじゃない。 手の中の小さな紙袋を音が鳴るほど握りしめる。 こんなの、作らなきゃよかった。 そして、「所詮こんな男なんだ」という思いがこみ上げる。 所詮そういう見るからにカワイイ女の子にころっといっちゃう男なのよ。 守りたいとか馬鹿なこと考える奴なのよ。 そうやって自分の女と周りの女子を比べる奴なのよ! そんな男なんて、あたしが好きだった男なんて、 「分かった。別れてあげる」 「…お前はそこで別れないで、とは言えない女だもんな」 大っきらい。
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