春に告ぐ。

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  その光の筋の一つを辿ると、丁度この坂を上がった先、真っ白なカンバスは其所だけきらきらと揺らめいていた。 僕の足は自然と動き出す。 そこに在る何かを、何故だかとても待ちわびていた様な気持ちになって。 見上げれば、朝陽を浴びて融け出した雪の滴を脱ぎ去った櫻の大木が、目覚めの刻を早めその枝先いっぱいにまで見事な花を咲かせていた。 その白い白い花弁は、とうに見馴れてしまったこのカンバスのどの白とも別様の美しさを持っていて、一瞬にして僕の全てを虜にさせた。 思わず緩んだ口許に気付くことはなかった。 思いがけずこうして貴女の温もりを感じ取ることが出来た幸せは、当然ながらそれとは比べ物にはならない程僕の意識を占領しているのだから。 僅かに――しかし確りと震えて止まない両の掌で、その力強く大きな幹にそっと触れてみる。 古より続くその鼓動が、  どくん。 と、僕の身体の奥深くにまで響いてきた。  
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