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母の愛のように優しく、そして大きな安らぎで包み込まれる感覚が、全身にじわりと温もりを与えてゆく。
それが、僕の心に閉じ籠っていた臆病さを押し出すかのように、その気持ちは自然と浮かび上がった。
この櫻に、託そうか。
貴女に会える頃、深い眠りに落ちている僕に替わって、この櫻ならきっと伝えてくれるだろう。
貴女の温もりを宿す、この櫻なら――。
幹に触れたままの両の掌に額を充て、瞳を閉じる。
貴女に届け。そう強く念じ、そっと呟いた。
「春に告ぐ……――。」
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