小春日和。

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  陽射しによって暖められた空気は部屋の中にまで届いていた。 誘い出されるように外へ出ようとしたのだけれど、せっかくならばと先日新調した赤いパンプスに履き替えた。 扉を開けば、優雅に踊る風が私の頬を優しく撫でながら通り過ぎてゆく。 この靴を履くために予め用意されていたかのような陽気に、自然と心も弾んでくる。 それはまるで指揮者のように。コツコツとアスファルトから奏でられる旋律は、周囲の喧騒を壮大な行進曲へと変えてゆく。 それが不意に途切れてしまったのは、貴方のうしろ姿が頭を過った所為だろう。 そうして、思う。 どうして? どうしてこんなにも胸が苦しくなるのだろう。 会ったこともない貴方を想うだけで―― いつの間にか一切の響きを遮断してしまっていた私の耳が、何かを語りかけるような風のざわめきを捉えた。 その風の往く路を辿れば、色彩沸き立つ世界の片隅に殺伐とした空間がぽっかりと現れた。
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