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「おい、逆島(さかしま)、正々堂々と勝負しろ。おまえのところは、落ちぶれたとはいえ近衛(このえ)四家の名門だったんだろ」  後藤が摺(す)り足で追いながら、声をかけてくる。タツオは相手にしなかった。力は相手のほうが圧倒的にある。それは今、この瞬間も変わらなかった。ジャージの裾(すそ)でもとられたら、即座に自分は潰(つぶ)される。タツオは敵が怖かった。だが、その恐怖は自分の力を出し切るために欠かせないものだ。息を切らしながら、後藤がいった。 「おまえの親父は、今のおまえの無様な逃げ明日を見たら、なんていうかな」  心理的な揺さぶりをかけてくる。タツオも父の名前を出されるのは気分が悪かった。顔に動揺が浮かんだのだろうか。後藤が叫びながら突進してくる。 「逆島ー!」
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