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タツオはサポーターを巻いた後藤の左ひざの脇を畳すれすれですり抜けながら、膝の正面から肘(ひじ)を叩(たた)きこんだ。確かな手ごたえがあった。そのまま前転して、試合場の隅に逃げる。両手と両足を獣(けもの)のようについて、後藤をにらみあげた。
「くそー、おまえはなんなんだ」
後藤が膝に手をついて、上半身を折っていた。ダメージはあるようだ。
「おい、後藤。貴様、この勝負に負けたらどうなるか、わかってるな」
「生きてるのを、後悔させてやるぞ」
「歩いて、部室から帰れると思うなよ」
相撲部の先輩たちから容赦ない罵声(ばせい)が飛んだ。後藤は顔にばちばちと平手をいれて、顔を真っ赤にして叫んだ。
「くそー、おれは絶対負けられねえ。おれの未来がかかってんだ」
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