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鬼気迫る形相(ぎょうそう)で両手を広げ、試合場の隅にいるタツオに突進してきた。左右に逃げるか、場外に逃げるか。タツオはそのとき、後藤の隙(すき)に気づいた。ノーガードで迫ってくる相手の顔面だ。ピンポイントであの顎(あご)を撃ち抜ければ、体重が2倍ある後藤でも倒せるかもしれない。相手は前進している。タツオの打撃力に自分の体重を加えた必殺のカウンターだ。
(勝てるかもしれない!)
タツオは回避から攻撃に作戦を切り替えた。両手両足を突いた四足のまま、肉食獣のように後藤の巨体の足元に跳(と)びこんだ。太ももがはち切れそうで、10トントラックのタイヤのようだ。後藤がなにか吠(ほ)えているが、意味はわからなかった。
「貴様ー! ぶっ殺す!」
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