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 タツオは徹底的に不格好(ぶかっこう)だった。左右に逃げ回り、つかまりそうになると畳(たたみ)の上に転がった。一度などは手をつきながら、後藤の股(また)のあいだをくぐったこともある。  自分では意識していないが、タツオは相撲という競技のルールを利用して、退路を発見し時間を稼(かせ)いでいた。相撲では足の裏以外の身体(からだ)のどこかが、土俵につけば勝敗が確定する。倒れている相手や場外に逃(のが)れた相手を攻める技がないのだ。つかんで投げるか、突きだす。相撲の技の基本はその2通りのバリエーションである。
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