ルームメイト

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私には、一年前のその時までは、この2LDKの部屋を共有するルームメイトがいた。 梓は高校の同級生で、同窓会で再会して話が盛り上がり、ほとんどノリみたいな勢いで一緒に住むことになった。 大学を卒業する、少し前のことだ。 部屋探しは楽しかった。何軒も物件を見てまわり、お互いの職場との距離や、交通の利便性を考えて決めた。洒落た飲食店や雑貨屋が近くに多いのも、魅力のひとつだった。 私と梓はよく似ていた。二人とも料理が好きだったし、外食も同じように好きだった。インテリアにはこだわるほうで、引っ越したばかりの週末はショップ巡りに明け暮れていた。 なにより、今までずっと実家から離れたことがなかった私たちにとって、一人ならず二人暮らしというのはまるで未知の世界で、お祭りのような高揚感が続いていた。 「お揃いの香水買おうよ。同じ家にいるんだから、匂いも同じにしたほうがいいでしょ?」 と言い出したのは、梓のほうだった。 「えー、お揃いの香水?」 なんか恥ずかしいよ、と私は言ったけれど、嫌じゃなかった。お揃いの物を買うなんて、高校生に戻ったみたいで、なんだかくすぐったいような気恥ずかしさはあったけれど。 その果実のようにほんのり甘く香る小さく丸いボトルが、二人を繋いでくれる絆の証のようで、そのことがすごく素敵に思えた。
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