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そんな浮き足立った気分に歯止めをかけるように、私たち二人の生活に変化が訪れた。
就職して半年ほど経って二人暮らしも落ち着いてきた頃、梓に彼氏ができたのだ。
梓は特に男嫌いとかいう訳ではないけれど、異性が苦手で、恋愛経験は一度もないと言っていた。
私のほうも仕事が落ち着くまで恋愛はいいかなと思っていたので、私たち二人の生活に恋愛が入り込むこと自体、想定外のことだった。
「あのね、報告があるんだけど」
帰宅した彼女の顔は、熱があるんじゃないかと思うくらい火照っていたので、なにかあったのだろうということはすぐに察しがついた。
びっくりすると思うけど、自分でも信じられないんだけど、というような前置きを何度か繰り返したあと、意を決したように顔をぱっと上げて、
「私、好きな人ができたの」
と言った。
今まで、何度言い寄られても無関心を貫いていた梓のことだけに、私は少なからず衝撃を受けていた。
なんでまた突然、などとマヌケなことを言いそうになったくらいに。
「よかったねぇ!」
私は梓の手を取り、精一杯喜んだ。
本心だったし、興味があった。一生恋愛も結婚もしなくていいと豪語していた梓を、いとも簡単に振り向かせてしまった男に。
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