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「九谷病院ダヨ。」
小さな羽音と共に声が聞こえた振り向くと小さな灰色の鳥…。
「よーさん…。」
「とーチャン、武チャンハ九谷病院二連レテ行カレタヨ。」
よーさんの青い目が僕を見つめる。
その時間はわずか数秒…だけど…僕にとっては永い時間。
よーさんはフイっと顔を横に向けると話し始めた。
「よーさんノ初メテノ家族ガイナクナッテ、よーさんハ武司チャン二救ワレタノ。」
「よーさん…?」
「武チャンノ翼ハマダ閉ジテイルダケ。よーさんハ自由二飛ブ武チャンガ見タイ。」
よーさんは、僕にビニール袋に包まれた白いものを渡した。
それは、あの人が家事の中唯一持ち出せた、医者であった頃の白衣…。
「武チャンノ翼…とーチャン二。預ケル。」
「武チャント…ランチャンを助けて。」
ランチャン…?
ツッキーの事か?
「ランチャン…武チャンヲ助ケルタメナラ、ナンデモスル。」
お願いと縋る、よーさんを安心させるように笑ってから白衣を受け取る。
「とにかく、追う。」
まだ、間に合うはずだ…いや、間に合わせる。
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