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side S
明日は退院という日に、クリスマス・イブに出会った男は
俺の前に現れた。
「御機嫌よう、佐野様。」
初めて会った時と変わらない、美しい顔を病院中に晒して。
「あっああ…。お蔭様でな。」
若干、引きぎみな姿を気にする様子も見せず…両手一杯のバラの花束を俺に手渡した。
ちなみに、色は淡いピンクだ。
その甘い薫りと可愛らしい姿に頬を緩めると、
「やはり、佐野様にお似合いでございますね。」
と、その本人こそがバラの様に微笑んだ。
「さて、本題に入りたいと思いますが…。」
「その前に聞いてもいいか?」
「はい、何なりと。」
にっこりと微笑む男の顔の美しさに、少しドギマギしながら、最初に思った疑問をぶつけた。
「アンタは、誰だ?そして、なんで俺の名前を知っている?」
男は少し驚いた様に目を開いてから、深く頭を下げた。
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