序章

9/14
前へ
/184ページ
次へ
side O 薄暗い照明の中に浮かびあがる書類と本の山…。 時折、干からびた何かがチラリと見える。 漂う悪臭も気にせずに、ニコニコと書類と写真を見比べる男がいた。 その姿は爽やか。 そして、秀麗な顔に甘いかな笑顔を浮かべている。 場所の醜悪さと対照的な美しさだ。 柔らかな茶色い髪を揺らして、ゆっくりとそれを見つめた。 そして、 「ねぇ、ジェシカ…。君より魅力的な骨はないって思っていたのに…。」 僕は申し訳なさそうに、美しく磨かれた骨格標本のジェシカを見つめた。 ジェシカは、僕の不義理を咎めずに優しく見つめてくれる。 「肉が付いていても、こんなに美しいなんて…罪だよね。」 僕は写真の中の人に語りかける。 指先でその頬を撫でながら。 「あぁ…、どうしよう。初対面でキスしたらダメだよね。どうしたら、貴方は僕のモノになるかなぁ…。」 我慢できない、僕は写真と書類を優しく抱きしめる。 ドキドキが止まらない。 体が熱くなる。 あぁ…僕は欲情してるのか。 写真の…貴方に…。 どうしよう…自制…出来るかな? あぁ…でも… 「早く会いたいなぁ。佐野武司(さの たけし)さん。」
/184ページ

最初のコメントを投稿しよう!

573人が本棚に入れています
本棚に追加