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「なぜって……だって、タダシは話の全貌を伝えても、何度質問しても、まともに答えてくれそうにないんだもん。それなら、私に相談してくれた張本人を連れて来て、会ってもらった方が、タダシも少しは真剣に考えてくれるかなって、思ってね」  それを聞いて、空井正は、何か言いたげな様子を見せたけれど、結局は口をつぐんだ。  両膝の上に各肘を置き体重を預けながら、頭を抱えるような気持ちで利き手である右手の平を額に当て、嘆息を吐く。  校舎の方からは、いつも通り元気な学生たちの黄色い声が上がっており、それが非常に騒がしく感じた。  空井正が落ち着いてから一呼吸おいて、理空は彼に、手で示しながら、自分が連れて来た三人の紹介を始めた。 「タダシの隣に座っている、髪を少し茶髪に染めている彼は、流堂駈(りゅうどう かける)くん。さっき私が話していた、相談を受けたというクラスメイトの男の子だよ。青春について、今、大変悩んでいるの。金髪のカッコよさげな彼は、流堂くんの友達の銀田良助(ぎんだ りょうすけ)くん。流堂くんが心配だっていうことで、付き添いで来たんだよ。ツインテールが似合う彼女は、銀田くんの連れの小野綾弥(おの あやや)さんだよ。銀田(ぎんだ)くんが来るからって、ついて来たみたい」  紹介された三人は、それに合わせてて適当に軽く会釈した。  空井正は、そんな理空の紹介を適当に聞き流しながら、長椅子の半分の面積でなんとか体を倒そうと試行錯誤していた。  そんな彼の行動を制し、空井正の眠たげな目に視線を注ぎながら、理空は改めて問い正す。 「……ねぇ。タダシ。もう一回聞くけど、タダシは、【青春】って、何だと思う?」  その問いを聞いて、あとの三人も彼、空井正に視線を集中させた。  沈黙の空気を感じ取り、空井正は気まずそうに目を反らせながら、ポロリと言葉を溢した。
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