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「【青春】って、何だと思う?」
ナチュラルミディアムの黒髪を振り撒いて、理空(ことわり そら)は上機嫌にそう尋ねた。
そんな彼女の髪には、彼女のトレードマークである、太めで空色のカチューシャがつけられている。
空に浮かぶ太陽の光に照らされ、そのカチューシャの淡い色が、今はより一層際立っていた。
「さっきの休み時間に、今のことと同じことを尋ねられたんだ。元々は、クラスメイトの男の子に相談を受けてて、そのうちに、近所で起こった事故とか、そういった最近のニュースについての雑談になって、何となくの流れで、この話題になったんだけどね」
理空(ことわり そら)はそう続けて、手を後ろで組み、空を眺めながら、適当なところへと一歩進んだ。
彼女が眺めている空は、ここ最近のいつにない晴天の青空であり、それが彼女の気持ちをより晴らしていた。
ここは『中庭』と呼ばれる校内の一か所であり、正館と北館と呼ばれる同じような大きさ・古臭さ・形の校舎が、地面から同じように、また平行にそびえ立つ、その間に位置する場所である。
そこは、人の手によって作られた小さな野原のようなものがあり、緑が感じられる、そんな校内のオアシスとも言えるような場所だった。
いま彼女がいる所から少し外れたところには、草を掻き分けるようにして人工的に作られた、白い歩道が伸びていた。
その道のわきには、ペンキで焦げ茶色に塗られた木製の長椅子が3つ、等間隔で並んでいる。
「私はその質問を聞いて、こう考えたの。『【青春】はね、人生で一番輝いている時間。広々としていて、伸び伸びとしていて、自由が空いっぱいに広がっていて、いつも光り輝いている。そんな時間のことだなぁ』って」
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