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 彼女は、また横になった彼の、自分から見て奥側にある肩を両手で掴み「ふぬぅっ」という掛け声とともに、空井正を自分の方へと向かせる。  そして、彼の耳元でそっと語りかけるように、手を添えて言った。 「自分に尋ねられたことくらい、ちゃんと答えなさい。――――じゃないと、勝手にタダシの家にあがり込むからね!」  瞬間、空井正の瞼が勢いよく開眼した。  その様子を見て、理空は愉快そうに笑う。  空井正はそんな光景を目にして、面倒くさそうにそっぽを向こうとする。  けれども彼は、理空は一度言い出したことは実際に行動に移すところがあることを思い出し、仕方なく彼女の方に視線を戻した。  目の端に、大欠伸によって出てきたと思われる涙を滲ませながら、空井正は、ぼんやりとした瞳で、理空を見つめ、口を開く。 「あー、聞いてる聞いてる」 「……それ、絶対聞いていない人の言う台詞だよね」  理空が呆れたという表情でため息を吐いた。  いつもは強気な形をしている彼女の眉が、悲しそうにハの字を浮かべる。  女性にしては少し短めの彼女の髪が、その眉の上にかかり、より落ち込んだような印象を醸し出していた。  そんな彼女の雰囲気を察してか、空井正は、ボソリと言い訳を添える。 「……今日はな。天気が快晴の上に、ちょうど心地よい風も吹くから、絶好の昼寝日和なんだ」 「それは何の言い訳にも、なっていません~!」  そんな空井正の、苦しくも言い訳にすらならない言い訳を聞いて、理空はいたずらに笑みを浮かべて小さく舌を出す。  その彼女の仕草を横目で見て、空井正は気が抜けたように嘆息する。  疲れた様子でそっぽを向きながら、ポツリと愚痴に近い言葉をこぼした。 「それに、実際におれはちゃんと、ソラの話を聞いていたしな」  それを耳にした理空は、空井正に訝しげな表情で尋ねる。 「ほんと~? 言ってるだけじゃないの? それともタダシは、寝ながらでも耳に入っていたことを完全に記憶できるとか?」
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